フリーターのぼうけん

さいきょうの フリーターを めざして。 きじを ひとつ かくと レベルが ひとつ あがる。

フリーターが よんだ ほん 1

 

番号は単に読んだ順番なのであしからず。

 

 

空飛ぶタイヤ 池井戸潤

 

これまで池井戸潤を読まず嫌いしていた。今思えば申し訳ない。

 

読む前は、世界中で人気となったタイヤを開発した男たちの熱い物語かと勝手に思っていたら、まるで違った。「空飛ぶ」ってそういう意味かよ。

 

トラックが脱輪し死亡事故を起こした小さな運送会社・赤松運送の社長、赤松。整備不良と発表され会社は窮地に陥るが、赤松には納得できない点があった。遺族、取引先、銀行、警察、マスコミ、子供の通う学校、そしてトラックを製造した財閥系大企業ホープ自動車。あらゆる立場の人間の利害と思惑が絡み合い、時には協力し、時には裏切られ、少しづつ真相が明らかになっていく。

 

上・下2冊でそうとうなボリュームだったが、中だるみは一切感じなかった。おもしろかった。

 

笑う招き猫 山本幸久

 

一生舞台で漫才をやっていこうと決めた漫才コンビ「アカコとヒトミ」の話。

 

しばしば挟まれる漫才のシーンはテンポよく読んでいて爽快。

 

チルドレン 伊坂幸太郎

 

常にマイペースで回りを振り回すがなぜか憎めない男・陣内を中心に、その友人である鴨居、全盲で盲導犬ベスを連れた男・永瀬、ベスについつい嫉妬してしまう優子、家裁調査官となった陣内の後輩・武藤などの登場人物が、事件に巻き込まれたり、解決しようとしたり、いろいろする。

 

著者曰く、「短編集のふりをした長編小説」。その言葉通り5つの短編からなるものの、共通の登場人物の物語が様々な年代で描かれる。これぞ伊坂作品といった伏線回収も心地いい。特に「チルドレンⅡ」のラストは最高。

 

見えない誰かと 瀬尾まいこ

 

教師を続けていた筆者のエッセイ1作目。

 

田舎の学校に赴任した時の話が、田舎出身の自分には共感できた。出てくるひとりひとりに対する表現に、筆者の温かみが感じられる。

 

世界から猫が消えたなら 川村元気

 

郵便配達の仕事をしていた映画オタクの僕は、ある日突然余命わずかの末期がんであると宣告される。すると目の前に悪魔が現れ、この世界から何か1つを消すたびにもう1日生きることができると言う。

 

ありきたりな感想になるが、1日1日を大切に生きようという気持ちにさせてくれる。今日死ぬかもしれないと思いながら生きる人はほとんどいない。その日は必ず来ることは分かっているのに。今日ではないだろうと思い続け、いつしか本当に今日になる。本当は今この瞬間にも、死を覚悟すべきなのだ。

 

「フォースとともにあらんことを!」

「アイル・ビー・バック!」

 

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 村上春樹

 

つくるは高校時代、名前に色が入った4人の友がいた。しかしある日4人との関係は理由もわからないまま突然断ち切られる。それから長い年月が過ぎ、過去と向き合うべきだと恋人から促され、つくるは真相を追い始める。

 

あっという間に読んでしまった。驚きの展開の連続というわけでもないのに、次々とページをめくってしまう。村上春樹のすごさを再確認した。

 

教団X 中村文則

 

楢崎は、突然姿を消した女性・立花を追い、ある団体にたどり着く。そこで出会った不思議な人たちやさらに別のカルト教団を中心とした複雑な事態が次第に明らかになり、国を揺るがす大事件にまで発展していく。

 

長い。が、決して退屈ではない。

カルト教団内部の描写は奇妙さに満ちているし、2つの団体を率いる者たちの不思議な言葉たちも読んでいて飽きない。神、宇宙、運命、人間というものに対する著者の視点の数々に感嘆させられる。カルト教団は性の解放を謳っているのだが、性的な表現もかなりえぐい。